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HISTORY
2017
2017年度の全勉強会の記録です。
Session abstract
・日時:2017年9月20日(水)18:00-19:30
・会場:東京医科歯科大学湯島キャンパス 1号館6階歯学科演習室1・2
・講師:後藤啓二先生(NPO法人シンクキッズー子ども虐待・性犯罪をなくす会 代表理事, 本学理事
今回は『児童虐待』をテーマに、警察庁退職後に弁護士となられ、現在NPO法人シンクキッズー子ども虐待・性犯罪をなくす会の代表理事かつ本学理事の後藤啓二先生をお招きして勉強会を行いました。前半は後藤先生による配布資料の説明、後半は先生と学生との質疑応答と2部構成で進行し、机をロの字形式に配置し、互いに顔を見ながら先生と学生間で双方向のやりとりが行われました。
後藤先生による配布資料の説明では、増加の一途を辿る児童虐待の現状と事例に続き、子ども虐待死を無くすための先生の活動と活動を通して見えてきた日本の問題についてお話がありました。
児童虐待増加の背景にはこれまで子どもを見守ってきた互いに顔の見える地域コミュニティの崩壊と貧困問題があり、児童虐待の社会的損失は児童養護施設運営費等の直接費用と教育機会の剥奪等による間接費用併せて年間1.6兆円と試算されています。また、虐待によりトラウマを抱えた子どもは相当の数に及ぶと考えられ、そのような子どもは思春期以降非行等問題行動を起こす可能性が高くなります。児童虐待の深刻性にも関わらず、国は児童虐待対策法案設立に消極的で、児童相談所も警察との連携等あまり乗り気でないとのことです。その理由が「面倒くさいから」ということにはショックを受けました。国民がもっとデモ等で国に訴えれば現状は変わる可能性があるそうです。児童虐待問題は国民の強い要望として国に未だ認知されていないのです。
医療者と児童虐待の関わりですが、病院は児童虐待を発見しその後の対策へ繋げる重要な場です。しかし、日本では虐待疑いのケースを通報しなくとも罰則が無く、親との衝突を嫌って、虐待を疑っても通報しない事例が多いそうです(欧米では虐待見過ごしに対し罰則規定あり)。後藤先生は医療者と弁護士等の専門家の連携が確立した環境を整え、虐待疑い事例を通報しやすくする必要性を訴えていらっしゃいました。
後半は学生からの質疑応答の時間となりました。参加者からは活発に質問や意見が挙がり、これまで私たちが知らなかった児童虐待の現状に対して理解が深まっていきました。後藤先生は医療者が児童虐待に問題意識を持つために効果的な教育法を検討していらっしゃり、学生からのアイデアを出し合いました。
児童虐待問題は日本において深刻な問題であり、虐待死を防ぐのに医療者の役割は非常に大きいです。しかし、行政のレベルでの対策の必要性を伴うという問題の性質を考えると、私たちは医療者としてだけでなく、1国民として国に問題を訴える責任のある立場でもあるのだと思いました。(文責:嶋津)